挑戦と成長を支える「体のケア」
気軽に始めたのに、気がついたら通って3年
日本を代表するバレエ団のプリンシパルダンサーが語る、体の声に耳を傾ける重要性
聞き手:BDC PILATESディレクター 樋口知香
日本を代表するバレエ団、新国立劇場バレエ団。そこでプリンシパル(バレエ団の中の最高位)である速水渉悟さん。
BDC PILATESに通って3年。先輩に勧められて気軽に始めたものが、気がついたら3年続いていました。
日本のバレエ界を牽引するダンサーの一人である速水さんに、舞台に立つプロフェッショナルとしての体のケアについて、そしてBDC PILATESでのご経験について語っていただきました。
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■BDC PILATESとの出会い、他のトレーニングではなくここに絞ったワケ■
2018年に新国立劇場バレエ団に入団した速水さん。ピラティスと出会ったのは、痛みも抱えつつ、怪我をしないよう体のメンテナンスをしなくてはならないと思っていたときでした。
「BDC PILATESに通っているバレエ団の先輩に、とにかく10回やってみてって言われたんです。騙されたと思ってやってみてって。それで違うって思ったら辞めればいいと言われました」
まずは言われた通りに10回を目指してBDC PILATESに通っていくうちに、体のバランスを整え、痛みが出やすい部分への負担を軽減し、長期的なケアができるのではないかという可能性を感じたという。
「ピラティス以外の他のトレーニングも同時期に試してみたのですが、自分にはこれが合うなと思って。特に自分は脚のラインがズレやすいのですが、それがBDC PILATESに来ると整うことが分かり、ここ一本に絞りました。」
■バレエと海外経験が育んだ強さと柔軟性:体への意識の変革■
速水さんのバレエとの出会いは、4歳の頃の母親の勧めから始まったと言う。
幼い頃は純粋な舞踊の喜びに没頭していましたが、次第にコンクールへの挑戦を経て、ダンサーとしての意識も高まっていきました。そんな中、15歳でのドイツ留学は、人生において大きな転機となります。
「寮生活は、多国籍の同世代のダンサーたちと共に暮らし、多文化に触れることで視野が広がりました。毎日がバレエ漬けの生活でしたが、特に当時は不安に感じることはなく、自分に自信を持つことができました。」
この経験が、柔軟な体の使い方や適応力を養い、今も舞台での安定したパフォーマンスの土台となっています。
■ケガとの闘いと自己管理への目覚め:体の声を聴くことの大切さ■
キャリアの中で何度も怪我に見舞われた経験から、速水さんは体の自己管理の重要性を痛感します。
「ドイツのジョンクランコバレエスクールを卒業し、アメリカのヒューストンバレエに入団しました。そこでは実は怪我が多くて。初めての職場ということもあり、張り切って練習しては、怪我をして降板というのが何度か。リハビリや休養をしながら、『もっと自分の体を知る必要がある』と気づきました。」
「当時は、バレエ団のフィジオセラピーの人に言われたトレーニングをとにかくやる、というようなメンテナンスをしていました。」
ピラティスのマシンもバレエ団にたくさん置いてあったようですが、当時はそれをやるまでに至らなかったそうです。
写真:大洞博靖
■BDC PILATESの効果■
2018年に日本に戻り、新国立劇場バレエ団に入団した速水さん。ピラティスと出会ったのは、痛みも抱えつつ、怪我をしないよう体のメンテナンスをしなくてはならないと思っていたとき。
「BDC PILATESに通っているバレエ団の先輩に、とにかく10回やってみてって言われたんです。騙されたと思ってやってみてって。それで違うって思ったら辞めればいいと言われました」
まずは言われた通りに10回を目指してBDC PILATESに通っていくうちに、体のバランスを整え、痛みが出やすい部分への負担を軽減し、長期的なケアができるのではないかという可能性を感じたという。
「ピラティス以外の他のトレーニングも同時期に試してみたのですが、自分にはこれが合うなと思って、ここ一本に絞りました。」
「ただの体幹トレーニングではなく、呼吸と動きの一体感を追求しているんだってやっているうちに分かってきました。
体の軸がしっかりと整い、安定感が増したと思います。呼吸の質も上がりましたし、精神的にも落ち着きが生まれました。」
「僕は脚のラインが崩れやすいのですが、それが整えれるというのが一番分かりやすい効果でした。それで舞台上の動きに自信が持てるようにもなりました。」
「呼吸一つで、身体の気持ち良さや動きの質が全く変わるのを実感しています。疲れにくくなり、長時間の公演でもパフォーマンスをキープできるのは、BDC PILATESでのメンテナンスのおかげです。」
先輩の一言で始めたことが、気づけば3年も続いていました。
■毎日のケアから見える変化:バランスと自信の獲得■
速水さんは、今日のメンテナンスには、BDC PILATESを欠かせない要素として位置づけていらっしゃるそう。
「特に脚や腰のラインが安定しました。これにより、舞台での動きが軽やかになり、自信もつきました。心も穏やかになり、集中力も高まっています。」
また、ピラティスの精神面での効果も強調します。
「体の不調や気になる部分を改善しつつ、心もリフレッシュできる。これが継続の理由なんじゃないかな。」
■男性ダンサーにとってピラティスは超有用なトレーニング■
「男性ダンサーは、リフト(パートナーダンサーを持ち上げる動き)などが多く、体の傾きやズレは多々起きているのですが、それに気づきにくいということもあります。
でも、ピラティスを続ければ、自然と正しい姿勢や動きが身に付いてきます。何より、ケガのリスクを大きく減らせる点が魅力です。」
速水さんは、自身の経験を踏まえて、同じ舞台に立つ男性ダンサーたちにこう訴えます。
「恥ずかしがらずに、まずは気軽に始めてほしい。ピラティスって、元々は怪我をした男性たちのために作られたメソッドでしたしね。
継続することで、体の歪みやバランスの崩れに早く気づき、改善できるようになります。体調管理の一環として、ピラティスはダンサーにとって本当に心強い味方です。」
■これからの夢と挑戦:舞台を超えて伝えたいメッセージ
「次の公演や新しい挑戦が待ち遠しいです。
今はプリンシパル(バレエ団の最高位)として次の位を目指すというのはないけれど、初めていただく役など、公演ごとに未知の体験や発見があります。
そして、その背景にはずっと続けてきた体のケアや自己メンテナンスがあります。」
また、速水さんは海外公演や異なる役柄に挑戦し、より多くの観客に感動を届けたいと意欲を見せます。
2025年7月にはロンドンのロイヤルオペラハウスで、ロマンチックバレエの名作『ジゼル』を上演する新国立劇場バレエ団。(本インタビューは、速水さんが渡英をされる直前の7月初旬) 速水さんはジゼルの相手役、アルブレヒト役で出演されます。
新国にとって初の本格的な海外公演となり、日本のバレエが世界に届けられる歴史的な瞬間です。
「今はまだ緊張はあまりしていません。自分は舞台に出るのにあまり緊張しない方で、実はワクワク感の方が強いんです。
その安定したマインドもピラティスで支えてもらっています。そして色々な舞台への挑戦が、僕の成長を促してくれると信じています。」
■最後に伝えたいメッセージ:身体と心のケアの大切さ■
「バレエだけでなく、どんなスポーツや日常生活でも、体のケアはとても大事です。
呼吸法やマインドの柔軟性を養うことも、長く続けていくための秘訣だと思います。」
速水さんは、身体と心の両面でのケアの重要性を強調し、今後も一層の努力を続けながら、舞台と人生の両面で自身の成長を目指していく意気込みを語ります。
■BDC PILATESの良さと未来への想い■
最後に、速水さんはBDC PILATESについて熱い思いを述べています。
「BDC PILATESは、僕にとってただのエクササイズ以上の存在です。身体のラインやバランスを整えるだけでなく、心も落ち着き、集中力も高まります。」
「軽い気持ちで始めたのに、気づけば3年。これからも通い続けたいです。」
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■インタビューを終えて■
いつも明るくお茶目な速水さん。しかし、言葉では表さない真のプロフェッショナルとしての努力と熱意がインタビューを通じて深く伝わってきました。
ピラティスを指導していると、頭の柔軟さが体の変化を加速させることに気づきます。
筋肉を稼働させるのは脳であり、脳からの体への指令が柔軟に変えられることが、体の改善にも直接的に影響するからです。
速水さんは、その天性のオープンなマインドを活かし、これからもバレエダンサーとして進化し続けられるのだと確信いたしました。
これからのご活躍を心から期待すると同時に、その一助となり続けられるよう尽力したいと切に思うインタビューでした。
■後日談■
本インタビューの翌週に、ロンドンのロイヤルオペラハウスでの「ジゼル」の公演に出演をされた速水さん。
全公演満席で、世界中の辛口バレエ評論家たちにも絶賛をされるという快挙をなし遂げた新国立劇場バレエ団。
日本のバレエが世界に紹介され、その技術力と芸術性が世界のトップレベルのバレエ団に匹敵すると証明された瞬間でした。
速水さんもプリンシパルとしてこの大舞台で大成功をおさめられました。
ご出演後すぐに、「無事に終演しました!体も元気です。」とご報告くださったのは、我々サポート陣にとって何よりもの喜びでした!
2025年7月