ー 本日はお時間ありがとうございます。BDC PILATESに長く通ってくださっている湯原プロにお話を伺わせていただく貴重な機会を頂戴し、たいへん嬉しく思います。今日はどうぞよろしくお願いいたします!早速ですが、ピラティスを始められたきっかけを教えていただけますか?
きっかけは実はこちらのスタジオのオーナーと知り合いになりまして、妻が昔からピラティスに興味があってやりたいと言っていて。オーナーからスタジオを始めたと聞いたので、それを妻に言ったらぜひ行きたいと言ったので、それがまずはきっかけになりました。ピラティスは妻が始めるタイミングで自分も一緒に来てみました。
ー ピラティスのことはもともとご存知だったのですか?
プロのアスリートとして、いろんなエクササイズやケアのことは自分なりに結構調べていて、その中で、自分の記憶の中では、ピラティスというのは昔戦場で怪我をされた人たちの体を治すということを前提に考えられたということは知識としてありました。
僕自身も若い頃から怪我が多くて、大きなヘルニアも二回やっていたりするので、いろんな運動療法は当然やりつつも、年齢が今62歳、今年63歳になろうとしているところで、やはり体の動きというのは非常に悪くなってきている。部分部分の細かい動きというのを動かすというのが難しくなってきていて。
実はPNFという運動療法は続けているのですが、その中で、細かい部分の動きが意識しても動かなくなってきているという中で、ひょっとしたらこのピラティスというのがいいのではないかな、と思って追加する形で始めてみました。
ピラティスでは、非常に正しいやり方、それにものすごく細かく筋肉の名前でここを動かしてください、という指示があるので、僕自身にはものすごく分かりやすかったというのがあります。
ー ピラティスをされてご自身のゴルフにどんな影響がありましたでしょうか。
年齢がいき、怪我の障害があるので、自分の思うような動きができなくなって。それから可動域がどうしても狭くなっていってしまう。だから思ったところにクラブのコントロールができなくなってる、ということもあって、そういう中で、細かい動きをすることで可動域が広がったり、それから左右のバランスというのがゴルフはすごく重要なので、それを整えるという意味ではとてもプラスになっていると思います。
スポーツ全般に言えることだと思うんですけど、やっぱりパフォーマンスの時は、自分の姿が見えないんですね。となると、やっぱり自分のイメージで想像でやるしかない。よくゴルフのレッスンでビデオ撮ったり鏡を見て推奨しているでしょ。でももし自分が見ているということは、顔の位置が変わっているということだから。例えばここでピラティスで、皆さんもっとこっちですとか、このポジションですとか、数センチの単位で指示が出るわけで、それってゴルフも一緒なんだよね。鏡を見ながらというのは実際上、ボールを見ているのと、体を見ているのでは視野が違っていることなので、動きが違ってくるんですよ。
残念ながらビデオを使ってゴルフの診断をすることがすごく多くなっているんですけど、どんなに優秀なビデオでもレンズ特性というものがあって、レンズの中心は人間の目に近いんですけど、レンズの外に行くと外にどんどん広がっていってしまうという特性があって。ゴルフの中継を見ていると分かると思うけど、右に飛んで行ったボールって、ものすごく右に飛んでいるように見えるじゃないですか。でも実際はそんなことなくて。
となると、よく練習場で自分の後ろにビデオを置いてスイングを撮るってやるじゃないですか。あれは、実際のヘッドの動きよりも、外へ違う方向へレンズ特性で動いてしまうので、人間の目は非常に優秀で、脳の中で修正をしてくれるんだけど、ビデオは機械であるが故の特性があって、あれを信じてしまうととんでもないことになる。それを分かっていてやらなきゃいけないんだけど、そうなかなかできない。
自分の体をコントロールすることの難しさっていうのがそこにあって。見ることができないとなると、人の目を頼るしかない。それで自分でやるときに、「どうやってそれを現実と自分のイメージを一致させるか」というのがスポーツでは実はすごく大事なんです。
で、このスタジオでいろんなことをやっていると、自分がこう動かしてるつもりなのに、実際は違った、ということがあって、それを正しい方向に修正する訳でしょ。それがとてもいい訓練になるんじゃないかな、と思います。
だから僕なんかは、ここの筋肉を動かしてくださいと言ってその部分を触られると比較的易しい。でも、触らずに、ここ、と指指されて言われたときに動かせる人ってなかなかいないんですよ。どうやって動かすのか、という知識がないとできない。そういう訓練がすごくいいんじゃないかな、と僕はずっとやっていて思います。
あとピラティスは、機械を使って自分でやることができるという利点があると思います。マンツーマンでずっとやらなくても、マシンの力を借りて自分で練習することができるというのはすごくいいと思います。
ー 井上のレッスンはどうですか?
それはナンバーワンでしょ(笑)。
最初から、僕が筋肉のことを知っているんじゃないかな、と想像されたのか、ものすごく細かくバンバン出てくるので、そういう意味では凄いな、という印象を最初持ちました。
ー ご自身も解剖学など結構詳しくていらっしゃるんですよね?
そう、僕も怪我をして入院しているときに、ドクターを捕まえて、これはどういうこと、これはどうしてこうなるんですか、というのをものすごく聞くタイプなので。脳の勉強もしたりしているんだけど、言葉に共通点があるので、僕も理解しやすいし感じやすい、と思いました。
ー レッスンが終わられた後の体の感覚って、どんな風ですか。
正直言うと、翌日から筋肉痛です(笑)。自分自身がまだ若いな、と思って。
特にこのコロナでお休みをしていた期間から明けてまた来た時から、急に先生が厳しくなって(笑)。結構辛いことをさせられて。筋肉がプルプルなって、あれ?って言うぐらいに久しぶりに強烈な筋肉痛になって。僕にとってはものすごく良いことなんですよ。
このコロナの間にきちんとやらないとと思って、自宅でテレビ見ながらスクワット100回とか腕立てとか肩甲骨動かすとか、100回ずつ家の中で自分なりに続けていながらも、ピラティスをやりに来たあと物凄い筋肉痛が来たので、やっぱり使っていない筋肉が多かったんだな、って思いました。
しかも全身。ここのスタジオ、全身やるでしょ。全身筋肉痛ですよ。(笑)2-3日は消えないかな。
結局自分だけでやると、自分に都合の良いエクササイズややり方しかやってなかったってことですよね。
ー ゴルファーにとってピラティスはいいと我々も思っているのですが、ピラティスの良さってなかなか伝えにくいんですよね。特に男性にとっては分かりにくいものなのかな、と。
ピラティスの何がいいって言われると、僕も色々スポーツクラブに行ったりしてましたけど、まずね、清潔感が全然違うでしょ?雰囲気も全然違うし。女性が多いっていうのは、男性にとっては一つのネックではありますよね。だからそれをどう解消できるか、というのは思っているけど。
なぜ最初妻ときたかというと、体を動かすことに慣れている僕でさえ、最初は女性の場所という印象があったから、妻と一緒じゃないと行きにくいよね、と思ったところがあったはあった。そういうのをうまく解消できると、男性にとってももちろん必要なことだと思います。
あと男性だとどうしても力に頼る。自分のパワーを見せたいから。最初男性がピラティスをやると「なんだこれ」って思うかもしれない。重りを持ち上げた方がいいんじゃないかと思いがち。でも冗談じゃなくピラティスはきついんだよね。リフティングの方が反動を使えるから実は簡単で。あるところから納得がいけば、ピラティスは男性もハマるものだと思います。やっぱり如何にそれを体感をしてもらえるか。でもそれは一回じゃわからない。繰り返し繰り返しやることで、徐々に脳に対しても刺激が入っているだろうから。それを感じられるようになるまでは我慢して続けてもらう必要があるよね。
正直ゴルフのトレーニングって難しいんですよ。ジム行くと、男性だとより早く、より重く、より回数などとやりがちなんで、、、でも実はそうすると、ゴルフには邪魔な筋肉がついてしまう。
今のトップの選手たちは、マキロイにしてもタイガーにしても筋肉が大きくなってきているけれども、トレーナーがついて付けすぎないようにという形でブレーキをかけているんですよ。男性ってやり始めるとどんどん付いてくるから楽しくなってもっとやってしまうんだけれども、そうすると可動域が無くなったり、筋肉が硬くなったりして良くないんです。ある程度の制御をしないといけない。ただそれを指導できる人がなかなかいない。そうすると邪魔な筋肉がどんどんついていってしまう。でもここはそういうことはないんだよね。
あと特に一般の男性にとっては、ウェイトとか使うと障害を起こすことがあるでしょ。自重じゃないから怪我が多い。しかも人の目があるからより重い錘を持ち上げたいと思う。でもピラティスだったら、それがあり得ないから安心ですよね。特に年齢が行った男性にはとても良いと思います。
一方、肉体的な可動域を広げることがいいと思う人も多いけど、女性は可動域が広すぎてベターって開脚をしようとする人いるけれども、あれは腱が伸びすぎているからよくないんだよね。そうするとゴルフのパフォーマンスのためにはよくない。やっぱり決まった範囲までしか行かないから「パンッ(手を叩く音)」というカウンターが働きやすくなることを考えると、柔らかすぎるのも実はダメで。
足首なんかも実は硬い人の方がスピードが早いんですよ。柔らかすぎるとスピードを吸収してしまうから、反発が効かない。やっぱりこういうのはスポーツの特性で、両方の刃を持っていて、硬いと怪我をしやすいけど、スピードになる、とかいうこともある。そういうことを考えると、間違いなくピラティスでは体の動かし方を学べるし、体の中でよく言うインナーマッスルにアプローチをするには最善の方法かな、と僕は思います。
もちろんバランスボールに乗ってとか軽いウェイトを持ってとかインナーマッスルを鍛えることはできるけど、ここは色々なマシンを使ってインナーマッスルにアプローチができるからいいよね。