〜10年後、20年後も自由に動ける身体でいるために〜
BDC PILATESディレクターの樋口です。
最近、ピーター・アティア著『Outlive(アウトリブ)人はどこまで生きられるのか』という本を読みました。

この本のテーマは「長寿」。
ただし、単に何歳まで生きられるかという話ではありません。
大切なのは、長く生きることだけでなく、人生の最後まで健康で、自分のやりたいことができる身体でいること。
著者はこれを「ヘルススパン(健康寿命)」という視点から考え、運動、栄養、睡眠、心の健康など、さまざまな角度から健康長寿のための戦略を紹介しています。
その中でも私が特に共感したのが、運動の重要性と、身体を正しく動かす能力を身につけることの大切さでした。
これは、BDC PILATESがこれまで大切にしてきた理念とも深く重なります。
100歳になったとき、何ができる身体でいたいか
本書の中で印象的だったのが、「センテナリアン・デカスロン」という考え方です。
センテナリアンとは100歳以上の人、デカスロンとは陸上の十種競技を意味します。
著者は、人生の最終段階でも、自分ができていたい身体活動を具体的に考え、そこから逆算して、今の運動を設計することを提案しています。
例えば、
・床から自分の力で立ち上がる
・重い買い物袋を持って歩く
・階段を上る
・スーツケースを頭上の収納棚に持ち上げる
・片足でバランスを保つ
どれも、若いうちは当たり前のようにできる動作です。
しかし、80歳、90歳になっても同じようにできるとは限りません。
そして、これらの動作を将来もできるようにするためには、年齢を重ねてから慌てて運動を始めるのではなく、今から必要な身体能力を育てておくことが重要だというのです。
私はこの考え方に、とても納得しました。
私たちはつい、今の体重や体型、筋力、柔軟性など、いま、目の前の変化に意識を向けがちです。
もちろん、それらも大切です。
しかし、運動の本当の価値は、10年後、20年後の自分が、どれだけ自由に身体を動かせるかということにもあり、長く元気に健康に長寿を迎えたいのであれば、アティアはそれを将来から逆算して今何をするべきかを決めるべきと言っています。
「運動すること」と「正しく動けること」は同じではない
本書では、健康長寿のための運動を考えるうえで、筋力や心肺機能だけでなく、「安定性(Stability)」の重要性にも触れています。
身体を安定させ、関節や筋肉を適切に使い、バランスよく動く能力です。
これは、私が特に大切だと感じた部分です。
例えば、スクワットを10回できることと、股関節、膝、足首を適切に使いながら10回できることは、必ずしも同じではありません。
腹筋が強いことと、日常生活の様々な動作の中で、体幹を適切に使えることも同じではありません。
身体は、ただ強ければよいわけではないのです。
必要な筋肉が、必要なタイミングで働くこと。
関節が適切に動き、身体の一部に過剰な負担をかけずに動作できること。
そして、自分の身体が今どのように動いているのかを理解し、コントロールできること。
こうした能力があってこそ、身につけた筋力を日常生活の中で生かすことができます。
もちろん、正しい動き方を身につければ怪我を完全に防げるというわけではありません。
それでも、身体への負担を考えながら効率よく動く技術は、長く運動を続けるうえで重要な土台になると考えています。

身体の使い方は、学ぶことができる
BDC PILATESの母体であるBroadway Dance Centerは、40年以上にわたりダンサーの育成に携わってきました。
ダンスの世界では、筋力や柔軟性があるだけでは十分ではありません。
身体のどこを使い、どこを緩め、どのように重心を移動させるのか。
同じ動作であっても、身体の使い方によって、その動きの質は大きく変わります。
優れたダンサーは、単に身体能力が高いだけでなく、自分の身体を細かくコントロールする技術を持っています。
そして、その技術は生まれ持った才能だけではなく、観察し、理解し、繰り返し練習することで磨かれていくものです。
つまり、身体の使い方は「学ぶことができる技術」なのです。
私は、この考え方はダンサーだけのものではないと思っています。
むしろ、年齢を重ねても自分の身体で自由に生活したいと願う、すべての人にとって大切なことなのではないでしょうか。

BDC PILATESが「動きの質」にこだわる理由
BDC PILATESに通って下さっている会員の方はお分かりとは思いますが、当スタジオは、単にエクササイズの回数をこなすことや、運動量を増やすことだけを目的としていません。
講師は、一人ひとりの身体を観察しながら、どの筋肉が働いているのか、どこで余計な力が入っているのか、関節がどのように動いているのかを確認しています。
同じエクササイズであっても、身体の特徴やその日の状態によって、適切な負荷や動き方は異なります。
だからこそ、私たちは少人数制にこだわり、講師の指導の質を大切にし、教育に時間をかけています。
ただ動きを見せて、それを真似していただくだけではなく、なぜその動きが必要なのか、どうすればより適切に身体を使えるのかを伝えること。
そして、会員様ご自身が少しずつ身体への理解を深め、動きをコントロールできるようになること。
これが、私たちが目指しているピラティスです。
本書では、一人ひとりの健康状態や将来の目標に合わせて、運動や健康管理を考えることの重要性も説かれています。
この「個人に合わせる」という考え方も、BDC PILATESの指導方針と共通するものです。
ピラティスは、健康長寿を支える一つの大切な要素
もちろん、本書が推奨している運動は、ピラティスだけではありません。
筋力トレーニング、有酸素運動、心肺機能を高める高強度の運動など、さまざまな運動を組み合わせることの重要性が説明されています。
私も、健康な身体を長く維持するためには、様々な身体能力をバランスよく育てることが大切だと思います。
その中でピラティスが果たせる役割は、身体の動かし方を学び、様々な運動や日常動作の土台を整えることではないでしょうか。
自分の身体を理解し、安定させ、必要な筋肉を適切に働かせる。
その能力は、歩くことにも、走ることにも、筋力トレーニングにも、そして日々の何気ない動作にも繋がっていきます。
ピラティスをすること自体がゴールなのではなく、ピラティスで学んだ身体の使い方を、スタジオの外でも生かせるようになること。
そこに、大きな価値があると考えています。

未来の自分のために、今、身体を学ぶ
ピラティスを始める理由は、人それぞれです。
姿勢を改善したい。身体を引き締めたい。運動不足を解消したい。肩や腰に負担をかけにくい身体になりたい。
どれも大切な目的です。
でも、そのもう少し先に、「10年後も、20年後も、自分の身体で自由に動きたい」という目的があってもよいのではないでしょうか。
『Outlive』を読んで改めて感じたのは、健康は、何か問題が起きてから考えるものではなく、将来の自分のために今から育てていくものだということです。
そして、そのためには、ただ身体を動かすだけでなく、自分の身体を理解し、より良く使えるようになることにも意味があるのだと思います。
BDC PILATESが提供したいのは、単なる運動の場所ではありません。
自分の身体を知り、動かし方を学び、その学びをこれからの人生に生かしていける場所。
人生100年時代と言われる今。
大切なのは、ただ長く生きることではなく、長く、自分らしく動けること。
そのための身体づくりを、これからも皆様と一緒に続けていきたいと思います。
BDC PILATES
Director Higuchi
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参考書籍
ピーター・アティア、ビル・ギフォード著『OUTLIVE(アウトリブ)人はどこまで生きられるのか 健康長寿の限界を超える科学的戦略』(NHK出版、2025年)


